こんにちは。
この度、プレウォール工法の実大振動実験を行いました。
プレウォールの商品化から何度か企画検討されてはお蔵入りとなっていたプロジェクトで、
ようやく実現に漕ぎつくことができました。
試験は大林組様の技術研究所で行いました。
さすがスーパーゼネコンとあって素晴らしい環境の研究施設です。
(ドラマ「下町ロケット」のロケ地としても使われたそうです)
試験体の建物は2階建て、床面積32坪の4人家族を想定したプランで、壁量は耐震等級2相当。
条件としては積雪荷重10トン(積雪1.0メートル)、積載荷重7トン、計17トンの鉄板を敷いての試験です。
地震波は1995年(平成7年)1月17日に発生した、阪神淡路大震災。
震度7、加速度818galという過去の地震としては最大クラスの大震災を想定しています。
地震のタイプとしては先日の熊本地震と同じ、活断層が動く直下型地震となります。
今回の試験のポイントは積雪1.0メートルを想定し、積雪荷重が10トン乗っているところ。
住宅は地震時、頭の荷重が重くなればなるほど建物の揺れが増幅します。
つまり、積雪地域(北陸)において最悪の条件下での試験となるのです。
この条件、業界の方であればもうお分かりですね。
これは過去に誰も足を踏み入れていない未到の領域。
まさに前人未到の挑戦なのです。
今回の試験目的は、プレウォール工法の最大特徴である繰返しの地震に対する強さを壁単体ではなく
実際の建物で実証しようという試み。
それも最悪の条件下で。
目標は、本震(震度7相当)のあとの強い余震(震度6相当)に何度も耐え続けること。
しかも今回の熊本地震のような、想定外の震度7が2回続くことにもできれば耐えて欲しいという想いでした。
ただ2回目については、1回目の結果次第。先ず1回目をやってみないと分からないという状況。
今回のプロジェクトは構造力学の分野で権威ある先生に監修していただいていたのですが、
過去に例がないだけに先生にも予想ができない世界なのです。
先ずは、1回目加震、阪神淡路大震災100%(震度7相当/818gal)
試験動画をご覧下さい。
1回目加震後、多少の釘の浮きは見られましたが、特別大きな損傷はない状態でした。
そして先生から一言。
「2回目加震100%行きましょう!」
さすが!プレウォール!!
2回目加震、阪神淡路大震災100%(震度7相当/818gal)
試験動画をご覧ください。
2回目加震後、さすがに2回目はダメージがいたるところに発生しました。
但し、致命的な損傷はなく余震クラスであればまだまだ行ける状態。
3回目加震以降は時間の許す限り、余震を繰り返し行うということで、
阪神淡路大震災50%(震度6相当/400gal)を計8回行いました。
このクラスの揺れであればダメージによる低減率も緩やかであり、100回ぐらい続けても
十分耐えれるであろうという見解でした。
現在の建築基準法の耐震基準では、震度6強や7の地震が一回来ることしか想定していません。
今回の熊本地震では2000年に改正された新耐震基準で建てられた住宅が最大17棟*も全壊したそうです。
つまり、現行の耐震基準は最低基準であることを十分に認識して耐震設計を行う必要があります。
今回の実験で積雪地域において、最も危険である積雪時の大震災でもプレウォール工法
であれば本震2回、その後の余震にも耐え続けることが実証されました。
今回の実験結果は今後の木造建築業界の発展のため、学会発表も行いたいと考えています。
自然災害というのはいつも想定外なことが起こるものです。
「備えあれば憂いなし」
ウッドリンクはこれからも安心で安全な構造体を提供していきたいと思います。
※5月14日の日本建築学会の報告会にて、当初全壊は51棟と見られていましたが、
その後の検証により、最小10棟最大17棟と訂正がありました。