『鉋をかける仕事』

生産課柱材チームの稲垣です。
不要不急の外出を控えること、マスクを着用すること、ソーシャルディスタンスの確保など、新しい生活様式にも少しずつ慣れてきました。

最近は家にいる時間が長くなり気付いたことがあります。
私の自宅には和室があるのですが、和室は居心地がよく、ステイホームにぴったりの空間だということです。和室の居心地が良い理由は、柱、敷居、鴨井、長押、廻り縁、天井板など、自然素材である木に囲まれているからだと思います。自然素材という点では、畳、塗り壁も和室の良いところだと思います。

私はウッドリンクで超仕上げ(ちょうしあげ)の仕事を担当しています。
「超仕上げ」とは和室などで木を見せるように使用する柱材を鉋で削る仕事です。
実は自宅の和室の柱は私が自分で削ったものです。
今回のブログでは「超仕上げ」の仕事について紹介したいと思います。
以下、工程別に紹介します。

①番付(ばんづけ)
通常、柱材の断面は4角形で4面それぞれ木目が違います。その4面の中から最も見栄えがする(かっこいい)面を選んで、その面を住宅のどの位置に配置するか決める作業になります。
これにはたくさんの木を見て判断してきた経験と、その人のセンスが活かされる仕事です。

②柱ライン加工
ホゾ、仕口の加工が自動加工機で行われます。

③超仕上げ
「超仕上げ加工機」という加工機で自動で材料を送り、鉋をかけます。
この超仕上げ加工機を使うだけでも美しく仕上がるのですが、ウッドリンクではさらに大工道具の鉋を使って手作業で仕上げを行っています。

超仕上げ加工機

手鉋仕上げ

なぜさらに手間をかけるかというと、超仕上げ加工機だけでは「逆目(さかめ)」と呼ばれるわずかにざらついた部分ができる場合があるからです。
この「逆目」を鉋を使って手作業できれいに仕上げていきます。このことを「逆目を取る」と表現しています。
逆目を取った部分のビフォーアフターの写真を紹介します。写真では分かりづらいかも…。

逆目取り

ビフォーアフター

逆目を取らないとどんなデメリットがあるかというと、①手触りが滑らかではない、②塗装を行ったときに、逆目部分は塗料を多く吸い込むため、その部分だけ塗装の色が濃く出てしまう、といったことがあります。
そのため、ウッドリンクではこれまでずっと逆目を取る仕事を続けています。

友人宅や旅館などを訪れて和室を見る機会があると、つい柱を観察してしまいます。
最も目立つ場所にどのような木目を向けているか、逆目は取ってあるか、などを観察しています。そこからは、番付を行った人、仕上げた人の思いが伝わってくるような感じがします。

今後の私の仕事の役割は、この超仕上げの品質をこの先も維持すること、そして超仕上げの仕事を後輩に教えていくことだと思っています。
超仕上げ加工は主に私1人だけが担当している加工のため、生産課として生産性を向上させるには後輩に教えて多能工化を進める必要があります。
言葉では伝えにくい技術なので教えることは難しいとは思いますが、根気強く丁寧に教えていきたいと思います。