『きっかけを担う』

皆さん経験のある方も多いと思います。

ヒッチハイク。

こんにちは。上越店設計課の中村です。

もう数年前になりますが、海外にいた期間があります。旅行が趣味というわけでもないですが、せっかくなのでリュック一つで様々なところへ赴きました。誰も経験したことのないようなことを得たり、世界中に友達を作る!みたいな高い志や素敵な理由を持っていたわけではなく、単に金銭的な余裕がなかったためヒッチハイクで移動していました。
とはいえ、本当に様々な人種、年齢、性別、思想の人たちと話すことができ、固定観念に囚われず、よりフラットに視野を広げて物事を見れるようになったと思います。

あるとき、オーストラリアの南側の町から北上するため、ピックアップしてもらった際に、車中で口論(音楽性の違いみたいな感じ)になり荒野に置いて行かれてしまったことがありました。時期は8月の終わりころでしたが、日本とは季節が真逆の為、雹が降る時期でしたし、夜になると気温は氷点下に達し、息どころか髪も自らの呼気で白く凍る状況でした。
大きい道ではありましたが車は通らずプリペイド携帯は圏外。周りには大きい石や謎穴、植生も得体のしれない謎植物しかなく、頼りとなるのは月明りだけ。時折遠くの方で生命体かなにかが蠢くようなガサゴソという謎音が聞こえるくらいに神経が研ぎ澄まされました。
以前友人に貰っていた、一度開封すると元の大きさには畳めないくらいの分厚いアルミシート(「これはNASAが開発したんだーHAHAHA」と渡された)をかぶり岩陰に身を潜め朝を待つしかありません。
「これは死ぬかもなぁ」と実感した瞬間に、後悔であったり感謝であったり色々なものがこみ上げてきました。
真っ暗な場所で私を中心に広がる冬の空は本当に澄んでいて広く、天の川や流れ星は無類でした。まだ死にたくないなと思いました。
どのくらい時間が経ってからか、幸い通りかかった車に近くの町まで乗せていってもらうことができ、生き延びることができました。
それからヒッチハイクはしていません。

色々な場所を見て回りましたが、そこからくる大きな感動であったり、内的な変化というのは正直なく、本で読んだものや自身のイメージを超えるものはありませんでした。私自身の心を大きく打ち震えさせ、変化させたきっかけは自然への畏怖と、直面する死への恐怖という身を持った体験でした。

人間にはそれぞれ、きっかけとなる出来事がいくつかあると思います。私にとってのきっかけは前述のようなものですが、人ごみに流されて変っていく私を繋ぐ大きな錨となっています。
子どもの誕生、親しい人の死、病気等をはじめ、家を建てるということも一つの大きなきっかけだと思います。
構造設計という、安心して住むために最も重要な流れに携わることができ、責任感を感じるとともに、住む人が笑顔で過ごせる良き場所、様々な経験を共に歩む場所、というきっかけの一端を担えることにやりがいを感じています。気候変動や、自然災害の中でも、どしっとあり続ける快適な家を提供できるよう精進していきます。

入社し1年が経つ頃ですが、知識も技術もまだまだ未熟です。
先輩社員から多くを学び、仕事はもちろん人間的にも、より広く深く成長していきたいと思います。